健康経営実践のポイント
(1)健康宣言をしよう
❶経営者のメッセージでもある「健康宣言」を発信することが健康経営のスタート。
❷「健康宣言」の内容は、なるべく具体的に、従業員にわかりやすい言葉で。
❸経営者のやる気が従業員のやる気に大きくかかわってくる。
(2)担当者をきめよう
❶「健康宣言」を行ったあとは社内で健康経営を推進する担当部署・担当者を決める
(3)できることから始めよう
❶大きな成果をめざすより、まずはできることから始めよう
❷従業員の健康づくりは、コストゼロから始めることができる
❸PDCAを回して評価・改善することが大切
具体的な取り組み
(1)定期健康診断受診率100%をめざそう
❶健康診断は労働者の健康を確保するための基本的な取り組みです
❷労働安全衛生法で義務化されているので、労使が協力して受診率100%をめざすことが必要
❸健康診断の実施や受診の障壁になる「費用・時間・場所」等が低くなる企画・運営をすることが重要
(2)受診勧奨の取り組み
❶健康診断を実施・受診しただけでは健康確保も生産性向上も実現されません
❷健康診断の結果に基づいて再検査・精密検査・治療等を行い生活習慣の改善や就業状況・環境の改善に取り組む
❸がん検診などの任意検診の受診を促進し、労働者が重大な健康問題を早期発見・早期治療できるように努める
❹がん検診などの任意検診は安全性や有効性が確認されている内容を受けることが大切です
(3)保健指導・特定検診・特定保健指導
❶事業者は、健康診断結果を踏まえ、労働者が健康に働けるよう適切な措置を講じる必要がある
❷医療保険者は、内臓脂肪の蓄積に着目した特定健康診査(特定検診)及び対象者への特定保健指導の実施が、法
律上義務付けられている
❸労働者の健康管理と生活習慣病の重症化予防を着実に進めていくために、定期健康診断を適切に実施するととも
に、保険者への健康診断結果の迅速かつ確実な情報提供など、事業者と保険者が一体となって取り組みを進めて
いくことが必要
(4)教育機会の設定(ヘルスリテラシーの向上)
❶従業員のヘルスリテラシーが低いと、個人の健康だけでなく、会社の健康や生産性に影響します
❷授業員のヘルスリテラシーを強化することにおいても、信頼できる情報を探し、自社の活用を吟味して取り組む
ことが大切
❸社内での教育機会を設定するうえで、強化のポイントとして、経営層によるリーダーシップ、経営層から一般社
員、家族まで巻き込むこと、幅広い学習機会やさまざまな教育アプローチによって職業生活を通じて学び続ける
ことなどがある
(5)適切な働き方の実現
❶多様な人材を活用するワーク・ライフ・バランスが実現されなければならない
❷ワーク・ライフ・バランスの実現は、時間意識を高め「ムリ・ムラ・ムダ」をなくすことから始める
❸取り組みを組織風土に根づかせるには土台づくりが必要
(6)ワークエンゲイジメント
❶ワークエンゲージメントは、健康増進と生産性向上の両方につながる鍵概念として、メンテナンス対策でも注目
されている
❷ワークエンゲージメントは、仕事の資源と個人の資源によって高めることが出来る
❸健康経営では、組織と個人の両方に向けた取り組みが、ワークエンゲージメントの向上に有効と考えられる
※ワークエンゲージメントとは、「仕事に誇りややりがいを感じている」(熱意)「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)の3つが揃った状態であり、バーンアウト(燃え尽き)の対概念として位置付けられている
(7)職場の活性化
❶従業員のモチベーション向上には、「共通目的」「貢献意欲」「コミュニケーション」の3つの要素がポイント
になる
❷職場の活性化のため、限られた経営資源を生かして工夫している事例を参考にして、考えることは重要
(8)職場環境等
❶健康経営の施策として職場環境を整備するときは、健康の保持・増進と生産性を向上する「7つの行動」を促す
❷7つの行動は、それぞれ特定の健康課題と関連があり、その職場、企業において解決したい課題に合わせ、課題
解決に効果のある行動を促すよう環境を整えることが重要
❸具体的な職場環境にあたっては、PDCAサイクルをまわす継続的な活動として時間軸を考慮して、かつ関連す
る部門が協力して取り組むことが必要
❹7つの行動を中心とした活動の前提には、従業員の安全性や快適性を守るための労働安全衛生にかかる種々の環
境基準やガイドラインも併せて満たすよう配慮することが大切
※7つの行動・・・①快適性を感じる②コミュニケーションする③休憩・気分転換する④清潔にする⑤適切な食行動をする⑥体を動かす⑦健康意識を高める
(9)病気の治療と仕事の両立支援
❶治療と仕事の両立における困難も必要な配慮・支援も個々のケースで異なるため、上司、同僚、主治医、産業医
などの関係者が必要な情報・意見を出し合い、よく話し合って配慮・支援について決めることが重要
❷「体制の整備(相談窓口)」「両立を可能とする制度・ルールなどの整備」「関係者から必要な情報を集め、理
解や合意を形成するプロセス」に取り組む
❸厚生労働省の「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を参考にしよう
(10)食生活の改善
❶栄養バランスのよい食事をとるように心がけよう
❷1日3食、規則正しくとるようにしよう
❸職場においては、従業員が自ら正しい食事を選べるような情報提供、実践活動に取り組もう
(11)運動機会の増進
❶日常生活の中で体を動かす工夫をしよう
❷運動習慣を身につける工夫をしよう
❸従業員の身体活動や運動の機会の増進に向けた実践活動に取り組もう
(12)女性の健康保持・増進
❶働く女性の半数近くが女性特有の健康課題や女性に多く現れる症状によって、職場で困った経験を有している
❷女性特有の健康課題の中でも妊娠や出産に係る女性の生物学的機能・役割を保護すること(母性保護)は特に
重要なことであり、法令に基づいて取り組む
❸困っている健康課題や必要なサポートは女性従業員の業種や年代などの背景によっても異なるため、それぞれの
会社で実態を把握し、適した体制や制度などを整備する
(13)感染症予防対策
❶感染症は個人の仕事や生産性を脅かすだけでなく、多数の人へ感染し影響が拡大する場合がある
❷感染症が発生する前の平時の段階から感染症についての教育・啓発・予防接種や手指衛生といった感染予防行動
の促進、感染症発生時の休業ルールやパンデミック時の事業継続計画の策定などに取り組んでおくことが重要
(14)長時間労働者への対応
❶過労死やメンタルヘルス不調につながる長時間労働の削減は必須
❷労働時間の適正な把握は企業のリスクマネジメントの視点から重要
❸長時間労働への面接指導制度を活用しよう
(15)メンタルヘルス不調者への対応(ストレスチェックを含む)
❶悩みやストレスのある人の割合は、男性より女性の方がやや高く、男女ともに30代から50代が高い傾向にある
❷ストレスチェック制度の目的の一つは、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)
❸メンテナンス不調のサインを知っておけば、早期発見と早期対応に役立つ
(16)受動喫煙対策
❶受動喫煙により、さまざまな病気のリスクが高くなる
❷職場における受動喫煙対策を効果的に進めていくために、経営幹部、管理職及び労働者が各々の役割を認識し、
組織的に取り組むことが重要
❸職場における受動喫煙を防止するためには、屋内禁煙、もしくは基準に適合した喫煙室の整備が必要
(17)高齢従業員特有の健康課題への対応
❶フレイルとは、加齢とともに環境因子に対する脆弱性が高まった状態のこと
❷フレイルの構成要素には、身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルが挙げられる
❸メタボ対策からフレイル対策への切り替え時期は、年齢だけでなく、健康状態を考慮した個別の対応が必要
※身体的フレイル・・・ロコモティブシンドローム、サルコペニアなど
精神・身体的フレイル・・・老人性うつ、軽度認知障害など
社会的フレイル・・・孤独、閉じこもりなど
(18)目標設定と評価・改善について
❶評価指標及び目標値の決定、目標に対して現状を評価し、その乖離を分析して改善活動につなげていく評価・改
善を継続的に実施していくことが重要
❷評価指標の設定ポイントは、①経営課題解決につながる指標である、②改善可能である、③数字で評価できる、
④評価が難しくない、の4点
❸不適切な目標にならないよう、目標設定時に産業保健スタッフや医療専門職、保険者の協力を得る
❹生活習慣病の改善等、体の不具合の改善には時間がかかる。改善活動をルーチン作業化させる社内体制の構築
が、経営者にとっても重要
❺保険者に検診データを提供し、結果のフィードバックを受けることで、健康問題を見える化しよう
❻健康経営の改善活動では、従業員の意識を変えるということはある程度時間がかかるので、あきらめず地道に継
続して取り組もう
(19)社外リソースの活用
❶健康経営をスタートさせるには社外リソースと専門家を活用しよう
❷組織風土へ浸透させるには従業員からのボトムアップも重要
❸健康経営の主体はあくまでも企業や組織であることを忘れてはならない